厚生労働省は2026年10月16日、社会保障審議会の部会で、75歳以上の後期高齢者の医療保険料や窓口負担の算定に、株式の配当や売却益といった「金融所得」を反映させる新しい仕組みを、2029年8月から始める方針を示しました。まだ決定ではなく「方針」の段階ですが、離れて暮らす親が株や投資信託を持っている家庭にとっては、将来の医療費に関わる話です。この記事では、報じられている内容と、まだ決まっていない点、子ども世代が今できる備えを整理します。
何が変わる方針なのか
ポイントは、「年金や給与だけでなく、投資で得た所得も負担の判断材料に加える」という考え方です。
後期高齢者医療制度では、現在、年金収入や給与収入などをもとに、保険料や窓口負担の割合が決まります。窓口負担は原則1割ですが、所得が一定以上の人は2割、現役並みの所得がある人は3割です。一方、株式の配当や売却益などの金融所得は、多くの人が源泉徴収で課税関係が完結する方法を選んでいるため、市町村が収入の情報を把握できず、保険料や窓口負担の判定には反映されていません。今回の方針は、この金融所得も判定に含め、「支払い能力に応じた公平な負担」を求める趣旨とされています。
スケジュール:2029年8月開始の方針
| 時期 | 内容 |
|---|---|
| 2026年10月16日 | 厚生労働省が社会保障審議会の部会で方針を提示 |
| 2028年分 | この年の金融所得が、保険料等の判定の基礎になる |
| 2029年1月 | 金融機関が、後期高齢者の金融所得を市町村へオンラインで報告する仕組みが始まる |
| 2029年8月 | 金融所得を反映した保険料・窓口負担の判定が始まる |
これはあくまで厚生労働省が示した方針で、法律の改正や制度の詳細は、今後の議論で決まります。対象になる所得の範囲や、負担が変わる基準も、現時点では確定していません。
子ども世代にとって、何が関係するのか
親が75歳以上になる時期は、40代のパパの場合、10〜20年ほど先のことが多いでしょう。ただし、すでに75歳前後の親がいる家庭では、数年後の話になります。関係してくるのは次の点です。
- 親の医療費負担が変わる可能性:金融資産からの所得が多い親は、窓口負担が1割から2割や3割になる可能性があります。
- 親の資産の把握:どんな金融商品をどの口座で持っているかを、家族が把握していないケースが多くあります。
- 介護や生活費の資金計画:医療費や保険料の負担が変われば、親の生活費の見通しにも影響します。
窓口負担の割合は、どう決まっているのか
後期高齢者の窓口負担は、世帯の所得状況によって決まります。多くの人は1割ですが、一定以上の所得がある人は2割、現役並みの所得がある人は3割です。同じ年金額でも、世帯の人数や課税所得によって区分が変わる場合があります。今回の方針で金融所得が判定に含まれると、年金だけでなく配当や株の売却益が多い人は、区分が変わる可能性があります。ただし、基準となる金額は未定のため、いまの時点で具体的な影響額を試算することはできません。
今からできる3つの備え
- 親の収入と資産の全体像を、話せる範囲で聞いておく:年金額、持っている預貯金・株式・投資信託などの大まかな種類を把握します。無理に聞き出す必要はなく、「将来の介護や医療に備えて」という前向きな文脈で話しましょう。
- 親の加入している保険や介護の準備状況を確認する:医療保険、介護保険の負担や、高額療養費制度などの仕組みを家族で共有します。
- 制度の続報をチェックする:方針から法改正に進む過程で、内容が変わる可能性があります。厚生労働省の発表を、年に数回確認する習慣をつけましょう。
📌 「今すぐ何かを変える」必要はありません
今回の方針の開始は2029年8月で、まだ決定でもありません。慌てて親の資産を動かしたり、特定の商品を売却したりする必要はありません。制度の内容が固まってから、必要に応じて専門家(ファイナンシャルプランナーや自治体の窓口)に相談しましょう。
✅ 今週やること
①次に親と会う予定や電話の機会に、健康状態と生活の様子を聞く②親の保険証(後期高齢者医療被保険者証など)の保管場所を確認する③介護や医療のお金の話を切り出すタイミングを、夫婦で考える、の3つから始めましょう。
よくある質問(FAQ)
Q. この制度はもう決まったのですか?
A. いいえ。2026年10月16日に厚生労働省が社会保障審議会の部会で2029年8月から始める方針を示した段階で、法改正を含む最終的な決定ではありません。今後の議論で内容が変わる可能性があります。審議会での議論の経過は、厚生労働省のサイトで公開されています。
Q. 75歳未満の人にも関係しますか?
A. 今回の方針の対象は、75歳以上の後期高齢者医療制度の加入者です。75歳未満の人が直接影響を受けるわけではありませんが、将来自分が75歳になったときの制度として関係してきます。
Q. 株や投資信託を持っていると、必ず負担が増えますか?
A. 必ず増えるとは限りません。金融所得の額や、他の所得との合計によって負担割合が決まります。具体的な基準は今後の議論で決まるため、現時点で負担が増えるかどうかは判断できません。
Q. NISAの運用益も対象になりますか?
A. 報道では、対象範囲の詳細までは示されていません。NISA口座の運用益の扱いを含め、どの所得が対象になるかは、今後の制度設計を確認する必要があります。
Q. 親にお金の話を切り出しにくいのですが、どうすればよいですか?
A. 「将来の介護や医療に備えて、家族で情報を共有しておきたい」と前向きに伝えるのがおすすめです。資産の額を聞き出すのではなく、保険証や通帳の保管場所、困ったときの相談先を共有することから始めましょう。


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